第三章 九十九里浜で始まった地引き網漁業
3−4:干鰯(ほしか)と〆粕作り
捕れた鰯はすぐに浜に広げられ、天日干しにされます。カチカチに天日干しにされた
鰯を干鰯(ほしか)といいます。 生鰯(なまいわし)から干鰯になるまで春夏で約十日、秋から冬で二十日かかったそうです。
初夏の脂の乗った鰯はそのまま干すと腐ってしまうので、大釜(おおがま)で煮てそれを絞め具にかけて圧力を加えて油を絞りました。搾った油は不純物を除 いて灯火(灯明)用油として売られました。鰯の油はにおいがあり、油煙も多くて灯油としては粗悪でしたが、値段が安かったので貧しい庶民の灯油用としての 需要が多かったようです。
地下に何十キロメートルも坑道が掘られた佐渡金山をはじめ、各地の鉱山でも照明用に鰯の油が沢山使われていたということです。
油を搾(しぼ)った粕は〆粕(しめかす)と呼ばれ、搾られて硬く固まったものを細かく分けて天日干しにしました。これもきわめて上質な肥料になりました。